【COVID-19:レターズ・トゥ・エディター】from 楊世帆

拝復

 Yさんが翻訳した汪曾祺の「老舎先生」を読み、誠に感服しました。わたしも汪曾祺の文章を愛読していますが、この「老舎先生」は初めて読むものでした。
 
 この数日間、自分は家に閉じ込もって、あまり外出しませんでした。また、いろんなニュースを見て、中米両国が互いにコロナの責任を転嫁するため、世論を導こうと努めているように感じました。中国国内の世論も、それぞれの政治立場によって、罵り合っています。

 コロナの時期、登校もできないし、自分の研究もあまり進んでいないのに、こんなニュース、世論ばかり読んでいて、誠にうんざりしています。

 今日の午後、自分はちょっと広瀬川の河原まで散歩に出かけました。桜は半分散り落ちたものの、木々が芽生え、緑になって、活き活きと生命力を示しています。また河原で野球をしている子供たちも、元気満々に叫び、走っています。

広瀬川の河原にて(楊世帆・撮影)

 そんな風景を目にして、自分の気持ちはスッとして、明るくなりました。その時、汪曾祺のエッセイを思い出した。Yさんの言うように、汪氏は社会批判より、自然の美しさ、純粋な人間感情に注目しています。

 自分もその瞬間、国どうしの喧嘩、政治立場の衝突よりも、草木の芽生え、遊びまわる子供の姿など、生命力の溢れたもののほうが、より永遠の価値をもつと感じました。

広瀬川の河原にて(楊世帆・撮影)

 宇宙はこんなにも生き生きして美しい。わたしはこのような宇宙を愛しています。そんな気持ちをもって、漢詩一首を作りました。まともな詩ではなく、恥ずかしいですが、この気持ちを、みなさんとシェアしたい。


  青史幾行秦楚事    青史、秦楚の事を(いく)たびか(ぎょう)
  
  蝸牛角上仍嘵嘵    蝸牛角上、(しき)りに嘵嘵(ぎょうぎょう)たり
  
  人間草木年年緑    人間(じんかん)草木(そうもく)、年年(みどり)にして
  
  明月大江自逍遙    明月、大江に(おのずか)ら逍遙す

 

「蝸牛角上」は、言うまでもなく『荘子』に由来します。「人間草木」は具体的な草木を指していますが、汪曾祺のエッセイ集『人間草木』からの連想もあります。

 広瀬川の写真を数枚取りました。これもシェアさせてください。

 お忙しいようですが、睡眠はくれぐれもよくおとりください。

2020年4月15日 於 広瀬河畔
楊拝